「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

「夢見る水の王国」連載第6回/月刊北國アクタス3月号

一角獣の霊性は、その角に宿る。角を失った一角獣は、もはや聖獣ではない。 ――ハルモニア博物誌より連載第六回。前回までのあらすじ ライターの美沙(みさ)はシングルマザー。生まれたばかりの娘マミコを、海辺の別荘で暮らす父親に預け、仕事に復帰する。…

「夢見る水の王国」連載第5回/月刊北國アクタス2月号

すべて中心に空虚を抱くものは力を得る。そこから別世界の力が溢れてくるからだ。 ――ハルモニア博物誌より連載第五回。前回までのあらすじ マミコは、生まれてすぐに雑誌記者の母・美沙と離れ、海辺の別荘で、祖父と黒猫のヌバタマと暮らしてきた。マミコが…

「夢見る水の王国」連載第4回/月刊北國アクタス1月号

頭蓋に月が棲んでいるので、猫の目は光る。王の闇には、双子の月が巡る。 ――ハルモニア博物誌より連載第四回。前回までのあらすじ 会計士を引退し、海辺の別荘で黒猫を友に悠々自適の暮らしをしていた香月耿介(かつきこうすけ)のもとに、突然、娘の美沙(…

「夢見る水の王国」連載第3回/月刊北國アクタス12月号

貝の螺旋は永久に続き、その奥には無限の領地がある。螺旋の果ては、もう一つの国へと開かれた門。 ――ハルモニア博物誌より連載第三回。前回のあらすじ 早くに妻を亡くした敏腕会計士の香月耿介(かつきこうすけ)は、娘を全寮制の学校に預け、気ままに暮ら…

『文学賞メッタ斬り!リターンズ』で紹介

『楽園の鳥』が、『文学賞メッタ斬り!リターンズ』(大森望・豊崎由美、パルコ、2006年8月刊)で紹介されました。といっても本編でなく「巻末特別付録 ’04〜’06年版・文学賞の値うち 文学賞受賞作品を、点数で斬る!」というページ。以下のような…

「夢見る水の王国」連載第2回/月刊北國アクタス11月号

雲母は虹の隠れ家、極光(オーロラ)を宿す子宮。すべての雲母には、夢を吸収するという作用がある。 ――ハルモニア博物誌より連載第二回。前回のあらすじ 香月万美子(かつきまみこ)は新進のオペラ歌手。音楽ホールの柿落としのコンサートに出演するため、…

「夢見る水の王国」連載第1回/月刊北國アクタス10月号

月は迷っている。迷わなかった月など、ひとつもない。だから、いまも夜ごとに形を変え、ひとときとして留まることがない。 ――ハルモニア博物誌より『楽園の鳥』の作中作として登場していたファンタジー小説「夢見る水の王国」。構想十五年の超大作。ついに商…

宇山日出臣氏死去

『楽園の鳥』を単行本として世に出した宇山日出臣さんが亡くなりました。ご冥福をお祈りします。 各紙訃報:元講談社文芸局第三出版部長の宇山日出臣さん死去(asahi.com)2006年08月05日23時34分 宇山 日出臣さん(うやま・ひでおみ=元講談社文芸局第三出…

イベント:2月14日、受賞記念朗読幻燈会@渋谷

2月14日、渋谷で「楽園の鳥」リーディング・ライブの開催が決定しました。単行本カバーにも使われている門坂画伯の細密版画を投影しつつ、著者本人による朗読パフォーマンスです。【泉鏡花賞受賞記念スペシャル朗読幻燈会 寮美千子×門坂流『楽園の鳥』】…

泉鏡花文学賞 受賞スピーチ原稿/鏡花コメント/「ぼくだあれ」

第33回泉鏡花文学賞 受賞スピーチ原稿@金沢市文化ホール 2005年11月22日(Review Lunatique)……すばらしくよくできたスピーチ原稿で、授賞式でのパフォーマンスは多くの人に感銘を与えたようです。スライドも好評でした。 スピーチの内容で特に面白かったの…

授賞式での選考委員コメント/五木寛之氏

授賞作品について 五木寛之氏(※松永による抜粋要約)まず感心したのは文章がしっかりしている点。いまの小説の、新しい試みというか文章の乱れというか、そういうものとは無縁の、ちゃんとした文章で物語が進行している。立派なことだと感心しました。連れ…

授賞式での選考委員コメント/泉名月氏

お祝いの言葉 泉名月(なつき)氏「第33回の泉鏡花文学賞をご受賞の寮美千子さん、おめでとうございます。寮美千子さんは泉文学賞を夢に思い、憧れに憧れていらっしゃいました。そしてこのたびは、世にも不思議な、おめでたい、かわいい、美しい星の星回り…

授賞式報道

22日、金沢市で授賞式がありました。楽園の鳥―「羽ばたくことできた」寮さん、喜び語る(asahi.com:マイタウン石川) 金沢市主催の第33回泉鏡花文学賞の授賞式が22日、金沢市高岡町の市文化ホールであった。小説「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」(講談…

受賞報道にみる「楽園の鳥」/批評に期待

泉鏡花文学賞の受賞を報じた新聞記事(10月17日・18日の各紙ネット版)から、『楽園の鳥』がどんな作品であるかを読み取ることができる。 「リアリズムの基本を押さえ、自分の本当の魂を発見するという心の旅路を描いている」(選考委員会、北國新聞)…

コミュニティ紙「タウンニュース」で紹介

地域コミュニティ紙「タウンニュース」で紹介されました。『楽園の鳥 カルカッタ幻想曲』が第33回泉鏡花文学賞を受賞相模大野在住 作家・寮 美千子さん 1番欲しい賞だった 相模大野在住の作家・寮美千子さんの作品がこのほど、“ロマンの薫り高い文芸作品”を…

泉鏡花賞/さらに

asahi.comにも詳報が。泉鏡花文学賞 受賞の寮さん喜び/「夢のようで 言葉ない」(asahi.com:マイタウン石川) 第33回泉鏡花文学賞(金沢市主催)を受けた寮美千子さん(49)=写真、神奈川県相模原市在住=は「鏡花の作品の言葉の美しさや心の深さに胸…

泉鏡花賞/続報

地元紙に詳報が出ました。泉鏡花文学賞に寮美千子氏 「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」 来月22日に授賞式(北國新聞) 金沢市が制定した第三十三回泉鏡花文学賞の受賞作は十七日、寮(りょう)美千子氏(49)=神奈川県相模原市=の「楽園の鳥カルカッタ幻…

泉鏡花賞受賞!

『楽園の鳥』が泉鏡花文学賞を受賞しました! とりあえず、各ニュース・サイトから。泉鏡花文学賞に寮氏 「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」(Yahoo!ニュース) 第33回泉鏡花文学賞(金沢市主催)の選考会が17日開かれ、寮美千子さんの「楽園の鳥 カルカッタ…

2億2千万円の「楽園の鳥」

ちょっと前ですが、asahi.comにこんな記事が出てました。2億2千万円のネックレスを展示・販売 大阪のデパート 大阪市中央区のそごう心斎橋本店(7日オープン)に出店するフランスの宝飾店「ヴァン クリーフ&アーペル」が7〜11日、開店を記念して、飛…

単行本発売から半年

昨年十月に『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』の単行本が発売されてから、半年になりました。奥付は10月25日、アマゾン記載の発売日は27日。新潟県中越地震は発売直前の23日に発生。 寮美千子「『楽園の鳥―カルカッタ幻想曲―』とは何だったのか?」(C…

門坂流画伯の個展開催(大阪・香川・東京)

『楽園の鳥』のすばらしい装画の作家、門坂流画伯の“同時多発個展”が開催中です。 大阪/門坂流版画展 ギャラリープチフォルム 4月20日(水)〜5月10日(火) ※5月1日〜5日は休廊 大阪市中央区道修町3−5−1 明治生命道修町ビル1 電話06−623…

日刊ゲンダイに書評掲載

日刊ゲンダイで紹介されたようです。『楽園の鳥―カルカッタ幻想曲』著:寮美千子 19cm / 2730円 / 講談社灼熱の地で激しく交錯する男女の情念 ミチカは、30代の童話作家。10年の結婚生活に終止符を打ってから迎える2度目のクリスマス。かつてよく通った…

「本の雑誌」で紹介

「本の雑誌」で紹介されました。昨秋刊行された『楽園の鳥――カルカッタ幻想曲』(講談社)のカバーには著者名の寮美千子どころか題名もない(背にはあり)。表1になくて、表4のほうにあるという手は都築道夫らがやっているが、表4もISBN番号と定価が…

覚書:すべては風と共に去りぬ(だが土地は残っている)

映画『風と共に去りぬ』の主人公スカーレット・オハラは、『楽園の鳥』の主人公アモウ・ミチカに負けず劣らずの“行動力のある莫迦”である。目の前にある賢明な道をどうしても選択しない主人公にイライラさせられるのは、共演する登場人物のみならず、見てい…

「週刊読書人」に書評掲載

「週刊読書人」2月4日号(1月28日発売)に書評が掲載されました。評者は佐藤洋二郎氏。

「活字倶楽部」に書評掲載

「活字倶楽部」(雑草社)2005年冬号で紹介されました。ブックレビュー・コーナー「SF/ファンタジー」欄の筆頭に書評が掲載されています(92頁)。書影(帯つき)あり。ファンタジーに分類されていますが、そういう読み方も当然あります。 写真はリ…

「本の窓」に紹介掲載

小学館のPR誌「本の窓」で紹介されました。『楽園の鳥 カルカッタ幻想曲』寮 美千子/著 この原稿を書いている宇山日出臣君は、中井英夫氏の『虚無への供物』を文庫にするためにM物産を辞め、講談社に入ったという逸話を持ち、昨年六月には「新人作家の発…

週刊ポストに書評掲載

週刊ポストで紹介されました。インドで彼女を待つものとは? 『楽園の鳥 カルカッタ幻想曲』寮 美千子 離婚によって心に傷を負ったミチカは、かつてバーで出会ったニュージーランドの青年ディオンの<あそこに行くと、自分が生きてるって体中で感じられる>…

公明新聞に書評掲載

公明新聞に書評が出ました。連載紙だから、ほめるのは当然ではある。それにしても大絶賛だ。 大著である。四百字原稿用紙にして1200枚といえば、平均的な小説の3冊分の量になる。だけど、それが苦にならない。それどころか、ひさしぶりに、思わず時間を…

bk1に書評書きました

bk1に書いた書評が掲載されました。一冊で何度でも楽しめる多面体小説 usagito 2004/11/30 ★★★★★『楽園の鳥』はふつうの小説である。ただし、驚くべき特徴があって、その一つは、「ふつうに読める」ことだ。思いがけないほど、素直できれいな日本語だ。(…