「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

「夢見る水の王国」連載第6回/月刊北國アクタス3月号

ysk2007-02-20

一角獣の霊性は、その角に宿る。
角を失った一角獣は、もはや聖獣ではない。
   ――ハルモニア博物誌より
連載第六回。
前回までのあらすじ ライターの美沙みさはシングルマザー。生まれたばかりの娘マミコを、海辺の別荘で暮らす父親に預け、仕事に復帰する。祖父と猫とマミコの穏やかな暮らし。しかし、ある日、猫が老衰で死ぬ。死を意識した祖父の耿介こうすけは、マミコの行く末を案じる。嵐の翌朝、マミコは漂着物を探しに一人海辺へ。それがついの別れになるとは……。その頃、この世界と呼応するもう一つの世界で、雲母鉱山の老鉱夫が、少女の顔が浮かぶ雲母を掘りあてていた。「絵の浮かぶ雲母はすべて壊す」という掟を破り、老鉱夫はその雲母を隠匿するのだが……。
“この世界”と“もう一つの世界”との呼応はあきれるほど密接で、頭が変な感じになる。
しかし事態はそれどころではない急転直下で、それはもう大変なことに。そしてマミコひとりを残し、誰もいなくなった。
「月刊北國アクタス」3月号に掲載。オールカラー15ページ、挿絵3点入り。
小見出しは「夢散華/朝の渚/晩夏/La Wally/千里浜/走る子/冒険/砂の眼/貝殻の小径/波の賓客/弓なりの浜/木馬の瞳/去りゆく者/やさしい呪文/津波/小さな祭壇/絵本/影/罰/魔子/夢送り/Aria」。