「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

「夢見る水の王国」連載第14回/月刊北國アクタス11月号

ysk2007-10-20

砂蛍すなほたるの寿命は丸一日。夕暮れに羽化し、朝まで光の舞を舞う。今宵こよい光る砂蛍は、昨日の砂蛍ではない。
   ――ハルモニア博物誌より
連載第十四回。
前回までのあらすじ 祖父急逝のショックでマコとミコの二人に分裂した少女万美子。荒ぶる魂を持ったマコは、ミコから記憶を、一角獣から角を奪い「世界の果てへ捨てに行く」と逃走する。ミコと馬は、マコを追って幻の島へ。島の神殿では、占いにより、少女を「禍いの童子」として手配していた。行く先々で問題を起こすマコ。そのマコの足跡をたどるミコ。砂漠の舟人から小舟を奪ったマコは、本物の砂漠に迷いこみ、死んだはずの黒猫ヌバタマの化身に助けられる。ミコと馬は、一足遅れて、砂漠の舟人の船へとたどりつこうとしていた。
舟を奪って逃亡したマコに続いて砂漠の一族の少年の一家と接触した少女ミコは、日中の砂漠横断は不可能と諭され、農作業を手伝いながら夜を待つことに。
「わからないな。全然わからないよ。それに、もしそんなふうになっていたら、大変じゃないか。山が崩れたら、みんな水浸しだ」
「そうよ。その通りだわ」
砂漠の舟人の農業は、想像を絶する驚くべきものだった。しかしそれが彼らの日常風景なのだ。日の出から日没まで毎日毎日繰り返される、満ち足りた労働。
夜になって二人は、少年の操る舟で森の村へと向かう。着いた村では、今まさに盛大な葬儀が行われようとしていた。葬列は“世界の果て”の森へ行くという。
一方、マコは、黒豹の姿で現れたヌバタマとともに、ほとんど不可能ではないかと思われる砂漠の横断に足を踏み入れてしまっていた。

「月刊北國アクタス」11月号に掲載。オールカラー15ページ、挿絵3点入り。
小見出しは「漂着/種蒔き/青い珠/水撒き/青い火花/銀河/木馬の歌う子守唄/森の絵はがき/護符の瞳/祝祭の色/花の柩」。
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