『人間を守る読書』で紹介
- 『楽園の鳥』が、『人間を守る読書』(四方田犬彦、文春新書592、2007年9月刊)で紹介されています。第4章「読むことのアニマのための100冊」中の一冊。
魂の救済を求めタイからネパールへと彷徨ってゆく女性の物語。彼女はイギリス男に躓き、骨董もののバイクを持ち出そうとして失敗し、暑さと貧困のなかでしだいに変身の欲求に促されていきます。「美しかりし夢の世」の破綻を描いてきた作者は、ここで始めて*1現実の汚穢をかい潜り、魂の浄化に到達することを知りました。
……四方田氏は『楽園の鳥』の帯の推薦文を書いた人でもあります。
『人間を守る読書』275頁 - 『人間を守る読書』には、古今東西の、いったい人はどこを歩いていればこれほど多様な書物と出会うことができるのだろうかと思うほど実にさまざまな本が紹介されています。帯によれば155冊。うち100冊は第4章の短評。第1章「生のもの」第2章「火を通したもの」第3章「発酵したもの」はそれぞれやや長い批評で構成されていますが、「生のもの」の一冊として、なんと『ノスタルギガンテス』(寮美千子、パロル舎、1993年)が4ページ超にわたって紹介されています*2。
- そもそもこの大仰なタイトルの付いた書評集はどんな性格の本なのか。書評をあちこち書いているうちに数が溜まってきたので、新書にまとめてみた? いやいや、そんなものじゃない。
本を読まなくてもインターネットがあれば充分という人がよくいます。(……)仕事で調べものをするだけなら、それでいいかもしれません。でも書物は情報の束ではないのです。書物というのは何かを伝えようとする意志なのです。
……『人間を守る読書』は、四方田氏の書物に対する思い入れが伝わってくる“熱い”本。書評というより、本と読書を再定義しようとするアジテーションといったほうが近いかもしれない。橋本治が『浮上せよと活字は言う』(中央公論社、1994年)*3で「人は言葉でものを考える、だから活字は文化の中心なのだ」と宣言して、出版物の本来の力を発掘しようとしていたのを思い出しました。
『人間を守る読書』「前書きにかえて」――人間を豊かにする読書とは?
……こういう観点から選ばれた百数十冊のうち、寮美千子作品が二冊。四方田氏の読書量と執筆量からいって、数合わせに入れられた書評ではないはず。ありがたい評価です。
読み直すに値する本をみつけるということに尽きるんではないでしょうか。読書というのは量の問題ではなくて質の問題なのです。
(……)
もちろんここに紹介した本はわたしが読みなおすに値すると思った本ばかりです。
『人間を守る読書』「前書きにかえて」