「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

泉鏡花賞/続報

  • 地元紙に詳報が出ました。
    泉鏡花文学賞に寮美千子氏 「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」 来月22日に授賞式北國新聞

     金沢市が制定した第三十三回泉鏡花文学賞の受賞作は十七日、寮(りょう)美千子氏(49)=神奈川県相模原市=の「楽園の鳥カルカッタ幻想曲」に決まった。寮氏は一九八六(昭和六十一)年に童話作家としてデビュー、大人向けに執筆した最初の小説となったが、選考委員会は「リアリズムの基本を押さえ、自分の本当の魂を発見するという心の旅路を描いている」と高く評価した。授賞式は十一月二十二日、同市文化ホールで行われ、寮氏には正賞の八稜鏡と副賞の百万円が贈られる。
     午後六時から、東京・赤坂の「浅田」で五木寛之、泉名月、村田喜代子村松友視金井美恵子の五氏が出席して開かれた選考会では当初、出版社などから推薦のあった四十九作品のうち、金沢市の推薦委員の選考を経た「楽園の鳥」以外の五つの作品が選考対象となっていた。席上、泉氏が「新鮮な詩情がある」と「楽園の鳥」を強く推し、五氏の総意で受賞作に決めた。泉氏は「四次元の世界を感じさせ、詩情にあふれる小説」と評した。
     これまでに地元推薦作品以外から選ばれたケースは、一九七五(昭和五十)年の森茉莉氏の「甘い蜜の部屋」、二〇〇二年の野坂昭如氏の「『文壇』およびそれに至る文業」がある。
     選考後会見した五木氏は地元推薦作品以外からの受賞について、「定評ある方が受賞するケースが続いていたが、三十数年ぶりに初心に戻る野心的な発掘となった。金沢文芸館がオープンする金沢の新しい文芸ムーブメントに一石を投じることになる」と新しい才能に光を当てた「若返り」の意義を強調した。
     韓国・全州市を訪れている山出保市長は「良い作品を選んでいただいた。ロマンの香り高い文学賞にふさわしい作品と聞いており、受賞を励みに一層の活躍を期待したい」とのコメントを出した。
     寮氏は一九五五年東京生まれ。外務省、広告制作会社、コピーライターを経て、八六年に毎日童話新人賞を受賞。天文学や先住民をテーマにした作品を描き、代表作に「イオマンテ」「小惑星美術館」「ノスタルギガンテス」「父は空 母は大地」などがある。旧科学技術庁の宇宙開発委員会専門委員を務めたこともあり、火星と木星の間にある「小惑星8304」は、自身の名「リョウミチコ」と命名されている。
     泉鏡花文学賞金沢市出身の泉鏡花の功績をたたえて同市が一九七三(昭和四十八)年に制定した。
     初めて書いた大人向け小説で泉鏡花文学賞を射止めた寮美千子氏は神奈川県相模原市の自宅で「ベテランの先生が受賞される賞を、まさか私が」と声を弾ませた。
     これまで、童話を中心にした作品を発表してきたが、初めての大人向け小説の執筆を「自分のボキャブラリーを全開にできた」と振り返る。
     受賞作については、「ダメ人間のダメぶりを徹底的に描いた。大きな理想、真実を掲げながらも心の問題を解決できず、苦しんでもがくありさまをこれでもか、これでもかと書いた」と解説。「尊敬する鏡花先生の冠をつけた賞を受けることができて、夢のようです」とコメントした。
     楽園の鳥 カルカッタ幻想曲 二〇〇一年三月から翌年四月まで「公明新聞」紙上で連載された。三十代半ばの女性童話作家がインドを巡る。人々の生活を綿密に描写しながら、自分の本当の魂を発見するという筋立て。昨年十月、講談社から刊行された。
    泉鏡花文学賞決まる/寮美千子さん 楽園の鳥 カルカッタ幻想曲/『夢のようで 言葉が出ない』北陸中日新聞

     第三十三回泉鏡花文学賞金沢市主催)は十七日の選考会で、寮美千子さん(49)=神奈川県相模原市=の「楽園の鳥 カルカッタ幻想曲」を受賞作に決めた。選考委員の五木寛之氏は「哲学性やアジアの人々の生活描写などにも優れた作品」と評した。寮さんは「夢のようで言葉が出ない。こんなにうれしいことはない」と喜んだ。
     受賞作はインドやネパールなどを舞台に主人公が自分探しのため、心の旅をする様子を詩情豊かに描いた長編小説。四十九の推薦作品の中から選ばれた。
     寮さんは東京都出身。外務省、広告製作会社、コピーライターを経て一九八六(昭和六十一)年に毎日童話新人賞を受賞、童話作家としてデビューした。宇宙や先住民族などにも詳しく、代表作は絵本の「イオマンテ」「父は空 母は大地」など。二〇〇一年から約一年間、新聞連載した受賞作が初の大人向け小説だった。
     近年の泉鏡花賞は他の文学賞受賞者や著名作家が受賞していたが、五木さんは「野心的な新しい作家を発掘するという賞の原点に戻った」と話した。泉鏡花賞の授賞式は十一月二十二日、金沢市文化ホールで開かれ、正賞の八稜鏡と副賞百万円が贈られる。
    【顔写真あり】
    ……客観的に見ると、けっこういろいろすごいなあ。