「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

2007-01-01から1年間の記事一覧

「夢見る水の王国」連載第16回/月刊北國アクタス1月号

空の底にひしめく真昼の星のように、魂たちは、地の底で輝いている。 ――ハルモニア博物誌より連載第十六回。前回までのあらすじ 祖父急逝のショックでマコとミコの二人に分裂した少女万美子。荒ぶる魂のマコは一角獣の角を奪って「世界の果て」へと逃走。ミ…

「夢見る水の王国」連載第15回/月刊北國アクタス12月号

黄泉(よみ)帰りの森は、世界の果ての森。世界はそこで終わり、そこから始まる。 ――ハルモニア博物誌より連載第十五回。前回までのあらすじ 祖父急逝のショックでマコとミコの二人に分裂した少女万美子。荒ぶる魂のマコは「世界の果て」へと逃走。ミコと馬…

『人間を守る読書』で紹介

『楽園の鳥』が、『人間を守る読書』(四方田犬彦、文春新書592、2007年9月刊)で紹介されています。第4章「読むことのアニマのための100冊」中の一冊。魂の救済を求めタイからネパールへと彷徨ってゆく女性の物語。彼女はイギリス男に躓き、骨…

Amazon.co.jpのレビュー表示に新機能が

ここのところ、アマゾンの個別商品ページのデザインがちょくちょく変更されている。『楽園の鳥』のページでは、「それは違うでしょう」と言いたくなるレビューが最新で、長らくいちばん上に表示されていた。それが最近、「このレビューは参考になりましたか…

「夢見る水の王国」連載第14回/月刊北國アクタス11月号

砂蛍(すなほたる)の寿命は丸一日。夕暮れに羽化し、朝まで光の舞を舞う。今宵(こよい)光る砂蛍は、昨日の砂蛍ではない。 ――ハルモニア博物誌より連載第十四回。前回までのあらすじ 祖父急逝のショックでマコとミコの二人に分裂した少女万美子。荒ぶる魂…

「夢見る水の王国」連載第13回/月刊北國アクタス10月号

満月の晩、月光がそこだけ強く集まる場所がある。そこには、月光を鋳込んだ瑠璃(るり)色の玻璃(はり)を蔵した塔が埋まっている。塔は時に幻の青い炎をあげ、砂漠の旅人を惑わす。 ――ハルモニア博物誌より連載第十三回。前回までのあらすじ 祖父急逝のシ…

番外:「父は空 母は大地」の著作権侵害で岩井國臣前議員を民事提訴

美しい大地の思い出を受けとったときのままの姿で心に 刻みつけておいてほしい。 ――「父は空 母は大地」よりついに民事提訴。前回までのあらすじ 百五十年前のアメリカ先住民首長のスピーチをもとにした『父は空 母は大地』は、エコロジー思想の神髄を伝える…

「夢見る水の王国」連載第12回/月刊北國アクタス9月号

砂漠の舟人(ふなびと)は、まつろわぬ民。眠りは水を呼び、人々を近づけない。 ――ハルモニア博物誌より連載第十二回。(全二十四回)前回までのあらすじ 祖父急逝のショックでマコとミコの二人に分裂した少女万美子。ミコから名前を、一角獣から角を奪った…

番外:寮美千子編訳『父は空 母は大地』が盗用されている

百五十年前のアメリカ先住民首長のスピーチをもとにした『父は空 母は大地』は、エコロジー思想の神髄を伝える絵本。それが建設族の自民党参議院議員に、無断で、しかも「建設こそ自然との共生」というような主張の補強に使われているとなれば、具合が悪い。…

「夢見る水の王国」連載第11回/月刊北國アクタス8月号

二日月と三日月の夜に市で売られた物には、月の命が宿る。それを食べ、身につける者は、月に護られる。 ――ハルモニア博物誌より連載第十一回。前回までのあらすじ 少女は、祖父急逝のショックでマコとミコの二人の少女に分裂。マコはミコから名前と宝物の角…

「夢見る水の王国」連載第10回/月刊北國アクタス7月号

誰も、そこへ戻ることはできない。ただ前に進んで、再び行きつくことができるだけだ。 ――ハルモニア博物誌より連載第十回。前回までのあらすじ 祖父と二人暮らしの少女マミコは、祖父急逝のショックで、ミコとマコの二人の少女に分裂してしまう。傷ついた心…

「夢見る水の王国」連載第9回/月刊北國アクタス6月号

夢の棲む島は、水の下にある。島の人々は、それを知らない。 ――ハルモニア博物誌より連載第九回。前回までのあらすじ 台風一過の朝、渚に漂着した木馬を見つけた少女は、一緒に暮らす祖父に知らせようと走って帰るが、祖父は倒れ、亡くなっていた。ショック…

番外:著作権保護期間延長問題について意見募集

いま文化庁の審議会で、著作権保護期間の延長問題に関して各方面からのヒアリングを行っています。前回は(議事録がまだ出てない!ので報道によると)「創作者側からは保護期間の延長を求める意見が多く挙がる」という状況だったようですが、5月16日の第…

「夢見る水の王国」連載第8回/月刊北國アクタス5月号

追いかければ、追いかけるだけ、世界の果ては、彼方へと遠のく。 ――ハルモニア博物誌より連載第八回。前回までのあらすじ 島の雲母鉱山の老鉱夫は、雲母に映る夢の絵を砕き、世界に還すことを仕事としていた。ある日、愛らしい少女の顔を見つけ、老鉱夫はそ…

『日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006』で紹介

『楽園の鳥』の泉鏡花賞受賞について、『日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006』(SIGHT編集部/編、ロッキング・オン、2005年12月刊)で紹介されていました。 意義深いといえば、泉鏡花賞の結果もまた。浅学非才のトヨザキ、自らの不…

「夢見る水の王国」連載第7回/月刊北國アクタス4月号

夢は、見られただけではただの夢でしかない。読み解かれた時、新たな物語に生まれ変わる。 ――ハルモニア博物誌より連載第七回。前回までのあらすじ 少女マミコは祖父と二人、海辺の別荘で暮らしてきた。母のいない寂しさを感じながらも、祖父に愛され満ち足…

「夢見る水の王国」連載第6回/月刊北國アクタス3月号

一角獣の霊性は、その角に宿る。角を失った一角獣は、もはや聖獣ではない。 ――ハルモニア博物誌より連載第六回。前回までのあらすじ ライターの美沙(みさ)はシングルマザー。生まれたばかりの娘マミコを、海辺の別荘で暮らす父親に預け、仕事に復帰する。…

「夢見る水の王国」連載第5回/月刊北國アクタス2月号

すべて中心に空虚を抱くものは力を得る。そこから別世界の力が溢れてくるからだ。 ――ハルモニア博物誌より連載第五回。前回までのあらすじ マミコは、生まれてすぐに雑誌記者の母・美沙と離れ、海辺の別荘で、祖父と黒猫のヌバタマと暮らしてきた。マミコが…