「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

「夢見る水の王国」連載第5回/月刊北國アクタス2月号

ysk2007-01-20

すべて中心に空虚を抱くものは力を得る。
そこから別世界の力が溢れてくるからだ。
   ――ハルモニア博物誌より
連載第五回。
前回までのあらすじ マミコは、生まれてすぐに雑誌記者の母・美沙と離れ、海辺の別荘で、祖父と黒猫のヌバタマと暮らしてきた。マミコが十歳になる夏、ずっと一緒だったヌバタマが老衰で死んでしまう。ショックを受けるマミコ。祖父の耿介こうすけもまた、自身の寿命を思い、マミコの行く末を案じる。その頃、この世界と呼応するもう一つの世界ハルモニアでは、雲母鉱山の老鉱夫が、少女の顔が浮かぶ雲母を掘りあてていた。それはマミコの面影を宿していた。「絵の浮かぶ雲母はすべて壊す」という掟を破り、老鉱夫はその雲母を隠匿するのだが……。
それぞれの世界の、日常の断片と、ちょっとした非常事態。そのなかで、確実に“むこうの世界”の濃度が増してきている。誰も気付かないうちに閾値を超え、境界を越え、あとはもう落ちるべきところに落ち込む寸前、なのか。
「月刊北國アクタス」2月号に掲載。オールカラー、挿絵3点入り。
小見出しは「波のフーガ/砕ける月/夢の猫/さらわれた記憶/星座の足跡/空の水紋/水の輪/雲の入り江/貝螺旋/雷雨/虹の子/蛍/王国の鍵/月の拝殿/黄金の境界線/流れる水/小さな博物館/鉱石通信/古道具屋/物語の絵/時の翼/嵐の予感/憧れ/台風一過」。