「楽園の鳥」+「夢見る水の王国」メモ

松永洋介が作成した、寮美千子の長編小説『楽園の鳥 ―カルカッタ幻想曲―』(講談社2004)と、その作中ファンタジー『夢見る水の王国』(上下、角川書店2009)についてのメモ。作中のガンジス神話は『天からおりてきた河 インド・ガンジス神話』として絵本化(山田博之・画、長崎出版2013)。

「夢見る水の王国」連載第3回/月刊北國アクタス12月号

ysk2006-11-20

貝の螺旋は永久に続き、その奥には無限の領地がある。
螺旋の果ては、もう一つの国へと開かれた門。
       ――ハルモニア博物誌より
連載第三回。
前回のあらすじ 早くに妻を亡くした敏腕会計士の香月耿介かつきこうすけは、娘を全寮制の学校に預け、気ままに暮らしてきた。早めに引退し、海辺の別荘で悠々自適の一人暮らしをしていたところへ、突然、娘の美沙みさがやってくる。その腕には、生まれたばかりの赤ん坊マミコが。父親はいないという。父と娘と孫との穏やかな暮らしがはじまったと思ったのも束の間、美沙は仕事へ復帰したいと、赤ん坊を置いて一人東京へ、耿介は、戸惑いながらも、次第に子育ての喜びに目覚める。一方、もうひとつの世界では、雲母鉱山の老人が、幼い女の子の顔が浮かびあがる雲母を掘りあて、その子にすっかり心を奪われてしまった。二つの世界は呼応し……。
今回は万美子の母、美沙の話から。橋本治の「桃尻娘」シリーズかと思うような、恐るべき内面描写。そしてポカラからは一角獣の角が。あっちの貝殻の話と、こっちのこれとあのときの貝殻の話ほか。投稿ページには、「夢見る水の王国」のために岩手で定期購読をはじめたという読者の声が。
「月刊北國アクタス」12月号に掲載。オールカラー、挿絵3点入り。
小見出しは「影のない国/音の万華鏡/村の男の語った短い物語/村の男の語った少し長い物語/手紙/螺旋迷宮/手紙/神の企み/無数の名前/流れ星のかけら/幻の地図/世界の秘密/夢の鳥瞰」。